恋をすると顔が赤くなるのはなぜ?~血管と血液の秘密~
突然ですが、恋をして顔が赤くなり火照ったことはありませんか?
実は、これは顔の血管が広がったために起こった現象なのです。
恋愛をすると美しくなると言いますよね。そこで今回は血管・血液について少し話したいと思います。
血管の伸び縮みはなぜ起こるの?
血管は伸び縮みし、細くなったり太くなったりしています。心臓と一緒に働くことで血液を全身に循環させることができます。では、気温によって血管は細くなったり太くなったりし、温度調節をしていることは知っていましたか?血液の温度も生体が活動するためには重要な要素です。このコントロールをしているのが自律神経です。
寒い日には指先が白っぽく、冷たく感じます。
寒冷時には自動的に血管を細くして、指先など末端部に行く血液量を減らします。もし普段通りに血液が流れると、末端で冷やされた血液が大量に心臓に戻り、さらに前進へ冷たい血液が送られて脳や内臓が冷やされます。その結果、意識障害などの低体温症の症状があらわれることでしょう。
暖かい日には指先までぽかぽか、赤みがさしてきます。
温暖時には血管を広げて、温かい血液を末端部へたくさん送り込み、熱を発散して熱中症を予防します。
このように、しなやかな血管の働きは命を守ってくれています。この血管の伸び縮みは自律神経がコントロールしています。血管は筋肉(平滑筋)でぐるぐる巻きになっており、寒冷刺激やストレスで自律神経が刺激されると筋肉が縮み、指先が冷たくなります。一方、アルコールは自律神経の働きを鈍らせます。赤ら顔は血管が広がっている証拠です。ほろ酔い加減で居眠りすると、広がったままの血管から体温が奪われてしまいます。
動脈と静脈
動脈
役割
心臓から送り出された血液を全身の臓器や組織に送る
特徴
血流が速い、内膜が厚くて丈夫などの特徴があります。
静脈
役割
送り出した血液を心臓に戻す
特徴
血流が遅い、自由に太さを変えられるように薄いが断面積が大きい
静脈は、血液の貯蔵の役割も担っています。動脈には全身の血液の1割しかありませんが、静脈には7割まで貯めることができます。出血して血圧が下がると、静脈に貯めた血液を素早く心臓に戻すことで命を守っています。
静脈の弁と筋肉 ~しっかり歩きましょう!~
脚の静脈は重力に逆らって血液を心臓に戻さねばなりません。ここで静脈弁とふくらはぎの筋肉が重要な役割を果たします。筋肉が収縮すると、静脈は押しつぶされ、血液は上へと押し上げられます。いったん押し上げれば静脈弁が閉じるため、逆流しないようになっています。筋肉が緩んだときには、舌から血液が上がってくるので、順次血液を押し上げることができるのです。
座りっぱなし、立ちっぱなしで、筋肉のポンプ作用が働かないと、血液が脚に滞り、静脈瘤や血栓症の原因になります。歩く、脚を高くするなどして、血液を戻してあげることが大切です。
エコノミークラス症候群
エコノミークラス症候群とは、血管内にできた血の塊「血栓」が剥がれて流され、臓器を損傷し、場合によっては死に至る疾病です。長時間飛行機に乗っていると危険性が高まることからこのような名前がつけられました。正式名称は「深部静脈血栓症+肺塞栓症」と言います。
長時間同じ姿勢でいると、脚の静脈の流れが滞り、血栓ができやすくなります。時にこの血栓が剥がれて心臓に戻り、さらに肺動脈を詰まらせることがあります。突然呼吸が苦しくなり、息切れや胸の痛みなどの症状が出ます。この病気が最も多く発症するのは、機内ではなく、寝たきりや手術後です。しばらく安静にしている間に血栓ができ、いざ歩き始めた途端、血栓が剥がれて発症します。安静期間をできるだけ短くすること、体を動かすことが重要です。
たばこ
血管の最も大切な機能は、酸素を全身に送り届けることです。肺で酸素を取り込んだ赤血球が全身を巡り、酸素を供給します。肺は薄い小袋である肺胞から構成されており、呼吸時に肺胞壁を通じて酸素を受け取ります。たばこや大気汚染、粉塵などで肺に炎症が起きると肺胞が硬化し、壊れてきます。その結果、酸素が受け取りにくくなってしまいます。若いときの喫煙が高齢になって影響することもわかっています。
立ちくらみ
脳は酸素の約2割を使っています。「立ちくらみ」は一時的に脳の血流が下がった状況です。高齢者や血圧を下げるお薬を飲んでいる人、糖尿病などで自律神経の機能が低下している人は要注意です。意識が遠くなり、転倒する危険性があります。
注意するべきシーン
・炎天下の行動
・スポーツ中
・入浴中
・高熱がある
・ダイエット
・急に立ち上がる
・睡眠不足
※ゆっくり行動したり、気分が悪いときはすぐに座ることを心がけましょう。
立ちくらみの予防
水分の補給、食事で鉄分をとり血行を促す、ストレッチも効果的
肝臓をいたわろう!
ブドウ糖・アミノ酸などの小さい栄養素は腸で吸収され、肝臓に運ばれます。そして、肝臓で人の体に必要なたんぱく質を合成して全身に送り出します。ここで気をつけなければならないことは、肝臓の処理力以上に食べ過ぎると、ブドウ糖もたんぱく質も中性脂肪に変わり、肝臓内や庁の血管の周りに蓄えられます。これが脂肪肝と内臓脂肪で、メタボリックシンドロームの元凶です。
アルコール、薬、食べ過ぎ(栄養過多)などは肝臓に負担をかけます。また、健康食品が思わぬ肝機能障害を起こすこともあります。
肝臓をいたわるポイント
・適度な運動
・適量でバランスのとれた食事
・肥満解消
・疲労をためこまない
・飲酒や喫煙習慣を見直す
関節軟骨には血管がない!?
これまで説明したように、全身に酸素と栄養素を供給する血管と血液ですが、血管がなく、血液が流れていない部分があります。代表的なものに「関節軟骨」があります。関節は骨と骨の「ちょうつがい」になっており、滑らかに動いて硬い骨同氏がぶつからないように、骨の端は弾力性のある軟骨で覆われ、関節包という膜に包まれています。関節包の中には緩衝材として液体が入っているので、スムーズに動かすことができます。
軟骨には血管はありませんが、関節が動くと関節液に溶けている栄養素や酸素がポンプのように軟骨の中にしみわたります。動くことによって軟骨の健康が保たれているのです。
しばらく座っていて急に立ち上がったとき、膝がスムーズに動かない、でも少し動くと次第に動きやすくなる-なんて経験、ありませんか。動かないと関節液が軟骨にしみ込まず、軟骨の弾力性が損なわれたのです。
運動のしすぎや体の重みで軟骨に傷ができると、治すために骨から血管がのびてきます。そして軟骨が骨に変化し、変形性関節症となります。骨と骨がぶつかり合い、痛みが強く歩けなくなります。この症状は中高年女性に多く、予防は体を適度に動かし軟骨に栄養分を送り込むことです。
動脈硬化のスピードを高める危険因子
・HDLコレステロールの減少
・中性脂肪の増加
・高血圧(高血圧症)
・肥満
・高血糖(糖尿病)
・喫煙
脳血管の状態を把握するには?
フラッシュをたいて写真を撮ると、「赤目」になることがありますよね?これは、瞳を通して光が目の奥に入り、血管の多い網膜が赤く見えているのです。血管が狭くなっていたり、銅線のように光って見えたりしている場合は、脳の血管に動脈硬化が起こっていることが疑われます。
詳しく網膜の状態を診る検査が「眼底検査」です。暗室で眼球に光をあてて眼球の奥の網膜を撮影します。網膜の血管は脳につながる血管が枝分かれしたものなので、眼底検査で脳の血管の状態を推測することができます。眼底鏡で目を覗き込むように診ることもあります。高血圧・糖尿病などの発見にもつながります。
※参考書籍
「しなやか血管いきいき血液―健康寿命をのばすために知っておきたい65のはなし」
津下一代 東京法規出版
※画像引用:(財)北海道心臓協会